住宅密集地の窓は工夫が必要~都市部のリビングを明るく居心地良くするには

住宅密集地の窓は工夫が必要

「住宅は南面に大きな窓を設けて光を入れるのが良い」という考えは、必ずしも全ての住まいに該当しません。

窓から見える風景が、あまり良くない環境の場合、南面だからと言って大きな窓を設けてしまうと、室内から見える風景にがっかりしてしまうこともありますし、リラックスしたい空間が外から丸見えになることもあります。

住宅密集地だと、南側に建物が近接しているケースも多いため、窓の大きさや配置に工夫が必要です。今回は具体的に南側の窓を工夫した事例を紹介します。

南側に建物が近接している住宅密集地のリビング

住宅密集地の高窓
住宅密集地の高窓


近隣の住居が近接している都市部に建つ、インナーテラスのある家のリビングには大きな窓は設けていません。手の届く高さの窓は半透明の縦すべり出し窓にしていて、吹抜け上部の窓は透明ガラスの窓にしています。

大きな窓がありませんが、その分高い位置に窓があるので部屋はとても明るいです。

実際南側には近接して住居があるので、南側に大きな窓を設けても見える景色はお隣の建物ですし、目に近い位置は圧迫感を感じないための窓、風通しのための窓があれば十分。

都市部だからこそ囲われた空間で落ち着くリビングに

リビングダイニングの壁面側はテレビ台と引き出し収納の造作家具

窓の位置を高くしていることで、床に近い位置は少し囲われた雰囲気を感じることができるので、都市部とはいえ静かで落ち着いた空間を生み出しています。掃出し窓が無いので壁面いっぱい造作家具を設けられたので収納もしやすいリビングです。

この「囲われる感」と静かな空間が、居心地の良さを作りだしています。

月が見える事もある高窓

リビングの吹き抜け。高い位置に窓があるので部屋はとても明るい

上部の窓を透明にしているので月が見えることもあるそうです。日食の時もリビングから見えたとのこと。

上部の窓は南側だけ風通しのために電動の滑り出し窓にしています。吹抜けに面した上階の部屋には小窓があるので、その小窓をあけて風が通り抜ける計画にしています。

南側に建物が近接しているときは吹抜けを設けてリビングを明るくしたい、という要望もよく聞きますが、吹抜けが狭すぎると圧迫感を感じます。この家くらいの吹抜けがあると明るさを確保して開放感が得られるのだろうと思います。

窓の配置で風の通り道をつくる

風が流れる住まい


都市部の住居は窓を開けることが少ないかもしれませんが、窓を開ければ風が通る「風の通り道」をきちんと作ります。

風は入口と出口が必要。

居室にある窓は大きく設けても、風の出口を設けていないと自然に空気が流れません。今は機械換気が主になっていますが、自然に風が流れる仕組みも作っておくと心地よい家になります。

みゆう設計室の場合、基本的にはウォークインクローゼットや納戸などにも窓を設けます。収納にも風を通すことでカビの発生を防げますから。そして、家全体に風の入り口と出口を設け、風が流れるように計画します。

明るさが確保できるけれど、南面の景色があまり良くない場合

ただ、やはり大きな窓があると明るく開放感ある空間になるので、明るさを確保できるのであれば大きな窓は設けたいですよね!

明るさは確保できるけれど、南面の景色があまり良くない場合には、ガラスを半透明のものにするか、遮像効果のあるレースカーテンを使うことをオススメしています。

屋外から中が見えないレースカーテン
屋外から中が見えないレースカーテン

暑さ、寒さも考慮し「暮らし方」に合わせた窓配置にしよう

窓はたくさんあるから、大きい窓があるから心地良い空間を生み出すとは限りません。窓が多いことで夏の暑さ、冬の寒さに困ることもあります。

今は大きな窓から入り込む熱への配慮が必要で、大きな窓をあまり設けない家も増えてきました。真南の窓の場合は良いのですが、大抵の家の南面が東や西に少し傾いているので、特に夕方の西日で室内が暑くなるというケースはよく見られます。

もし大きな窓を設けた家にしたいのであれば、窓を設けられる土地を探すことも大事です。明るささえ確保できれば良いというのであれば、高窓を作るのも良いでしょう。

どんな景色が見られる家にしたいか、どんな日当たりの家にしたいか。その空間でどう過ごしたいか、という「暮らし方」に合わせた窓配置が大切だなと思っています。

ライフルホームズはじめての家づくりノート

この記事で紹介したみゆう設計室の設計事例

その他のいえづくりレシピ

もっと見る

一級建築士事務所みゆう設計室

〒658-0053 神戸市東灘区住吉宮町3-14-13-201

Tel 078-855-7860