アフターコロナで変わる家づくり~ストレスを減らし、テレワーク(在宅勤務)しやすい家に!

アフターコロナで変わる家づくり

新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言が解除されてから1か月ほど経ちましたが、みなさんは外出自粛期間どのように過ごしていましたか?

私はお客さまを不安にさせないように、2月から訪問営業はお断りして、訪問する仕事も減らしました。昨年からオンラインでの相談ができる仕組みをつくっていたので、外出できない時期でも今までと変わりなく相談を受けられたのは良かったのかもしれません。

今は少しずつ日常が戻りはじめていますが、新型コロナウィルス感染者の数もまた増え始めていますし、コロナ対策をした暮らしはこれからも継続していくことと思います。今回はアフターコロナ、ウィズコロナで変わる家づくりについて書きたいと思います。

アフターコロナで変わる家づくり、4つのポイント

この外出自粛期間、家で過ごす時間が増えた人やリモートワークをする人たちに向けたコラムを書いたり、監修したりしました。子どもを見ながら仕事をしなければならない悩みや、テレワークがうまくいかないというワーキングマザーの仕事の悩みもたくさんありましたね。

そして、コロナウィルス感染やリモートワーク、また家族が常に在宅している家のありかたについて多く考えさせられました。

取材や監修の際に担当ライターさんとお話をする中で、アフターコロナに作る家が変わることに気づきました。私が気づいた「アフターコロナの家づくり」には4つのポイントがあります。

「アフターコロナの家づくり」4つのポイント
  • 住宅の換気が変わる
  • リモートワークができる環境が必要
  • 防音室が1家に1室
  • 家の居場所を複数つくる

アフターコロナの家づくりで「換気」が変わる

現在、住宅の新築をする際に、24時間換気機器の設置が建築基準法で原則義務付けられています。「給気(屋外から空気を吸い込む)」と「排気(屋外に空気を出す)」の両方が満たすことで換気ができるのですが、24時間換気システムでは次の3つの換気方法があります。

24時間換気システムの3つの方式
  1. 第一種換気:給気(機械)→ 排気(機械)
  2. 第二種換気:給気(機械)→ 排気(自然・開口のみ)
  3. 第三種換気:給気(自然・開口のみ)→ 排気(機械)

第一種換気

第一種換気システム

屋外から空気を吸い込む「給気」も、屋内の空気を外に排出する「排気」も換気扇を使用。確実な換気がしやすいが、機械で換気する箇所が増えるので他の換気方式よりもコストがかかる。

第二種換気

第二種換気システム

屋外から空気を吸い込む「給気」で換気扇を使用。室内が「正圧(屋外よりも気圧が高い状態)」になる。空気は圧力の高い方から低い方に流れるので、扉をあけてもほかの部屋から汚れた空気は入らない。

第三種換気

第三種換気システム

屋外の空気は給気口から自然に取り込み、屋内の空気を外に排出する「排気」で換気扇を使用。トイレやお風呂など、室内に湿気や臭いを入れたくない部屋に排気用の換気扇を設ける。換気扇の数が少ないので最も安価。

第三種換気の給気口

費用が抑えられるので今までは第三種換気システムにすることが多かったのですが、家族の誰かがコロナウィルスに感染した時のことを考えると、少なくても1室はその部屋で完結する機械換気にしておく必要があると思いますし、また、建物内を正圧にする第二種換気も住宅で必要とされるのかもしれません。(第二種換気は無菌室などで使われます)

アフターコロナの換気は組み合わせ!

今まで多く使われていた第三種換気方式

第三種換気方式

今まで一般的に取り入れていたのは第三種換気方式でした。コストが安価なことがメリットですが、家全体に取り入れた空気を水回りから排出するので、家全体の空気が洗面所やトイレに流れていきます。

新型コロナウィルスに限らず、感染症にかかった家族が寝室に隔離していたとしても、空気は洗面所やトイレなどの空間から排出されます。

1室だけ換気方式を変える

第三種換気システムに1室のみ第一種換気を取り入れる

アフターコロナの換気方式は、今までの「第三種換気方式」をベースにしながら、隔離する1室だけでも常時換気する「第一種換気(給排気共に機械換気)」を取り入れるほうが良いのかなと思います。

そうすると、その1室は少なくてもほかの部屋との換気方式に関係なく独自に換気できますから!個室は全て第一種換気にするというのも良い方法だと思います。

隔離ゾーンがあると良いのかな?

換気のエリアを分ける

もっとしっかりエリアを分けたいという人もいるかもしれません。実際はトイレなども使用すると思うので現実的ではないかもしれませんが、今後は「隔離ゾーン」を考えた家の提案も増えるのではないかと思います。

家族が安心するための換気のスタイル

新型コロナウィルスは飛沫感染、接触感染すると言われているので換気のために移動する空気で感染するとはいえないのですが、個室だけ、もしくは1室だけでも個別に常時換気できれば安心できますよね。

今はセントラル換気システムの利用も増えていますが、どの換気方式を使うと安心できるのか、ということを考えて、提案をしていこうと思っています。

リモートワークしやすい環境は子どもの学習にも役立つ

ダイニング横に設けたファミリーデスク

外出自粛期間リモートワークが必要になった人がかなり増えたことと思います。私は今でこそ自宅とは別に事務所を構えていますが、10年近く自宅事務所で仕事をしていたので、リモートワークでの悩みはよく分かりました。

そもそも私が事務所を自宅の外に構えたのは「子どもがうるさくて仕事にならない」のが原因でしたから。

今までに多くの「ファミリーデスク」のご提案をしてきましたが、これは自分の自宅事務所での経験を活かしています。

みゆう設計室が提案する「ファミリーデスク」
  1. ネット環境の充実
  2. 文具、学用品に限らず、ランドセルや書類なども収納可能
  3. プリンターやモデム類の設置
  4. 子どもの学習スペースに限定せず、大人がパソコンや書類作成に使える
  5. ワークをする場所は心地よく
キッチン横に設けたファミリーデスク

ダイニングの隣にファミリーデスクを設けている家が多いですが、広く設けた廊下やサブリビングでもOK。個室のデスクとの違いはやはりネット環境でしょうか。ファミリーデスクを設ける場所をネットの拠点にすると、大人は仕事、子どもはオンライン学習がしやすくなります。

誰が使うという限定をしない、フリーアドレスのデスク、を自宅に。これがアフターコロナの家づくりには必要だと思っています。

ファミリーデスクの事例

アフターコロナの家には「防音室」がおすすめ

以前から防音室のニーズを感じていて、実際に施工した事例もあるのですが、アフターコロナの家づくりにはこの「防音室をつくるべきだな」と感じるようになりました。

防音室といっても、音楽を演奏する部屋ほどの防音グレードではなく、日常使いに役立つ、防音効果のある部屋があると良いなと思っているのです。

こんな場所が「防音室」になると安心!
  • いびきが気になる人の寝室
  • 音に敏感ですぐに起きてしまう人の寝室
  • リモートワークでオンライン会議や電話の際に使える部屋
  • 赤ちゃんの夜泣きや子どもの騒ぐ声が気になる時に使える部屋
  • 屋外がうるさいなと感じる年輩の方のための部屋

目的によって防音のグレードを変える必要はありますが、初めから1室「防音室」を作っておくと安心できるのではないでしょうか。これはオレンジページに掲載された「家族みんなが居心地いいってどんな家?」という特集の取材でいろんなアイディアを話しているときに気づき、オレンジページの記事にも取り入れていただきました。

くつろぐリビング=ソファという考えをやめ、複数の居場所がある住まいに

「家に複数の居場所をつくる」提案をいつも心がけているのですが、今回のステイホーム期間に改めてその必要性を実感しました。
これほど長い期間、家族が同じ空間で過ごすのは初めての方もいたかもしれません。

「家族一緒に過ごせる空間」が欲しいという要望は多いのですが、例えばみんなそろってソファ付近で一緒にテレビを見る、という状況はあまり長い時間ではないと思います。それより実は家族一緒に過ごしながら別々のことができる空間の方が必要とされているのではないでしょうか。

ダイニング、ヌック、リビングと連続した空間に居場所がそれぞれある
ダイニング、ヌック、リビングと連続した空間に居場所がそれぞれある

そこでオレンジページでは「同じ向きを向かなくてもいい」ということ。
チアフルカフェのコラムでは「リラックス時間について考える方法」について提案しました。

家族が過ごす場所、例えばリビングでどう過ごしますか?と聞くと、ソファでくつろぐ、と答える方は多いのですが、日本のリビングでは3人までしかソファに座れないのではないでしょうか。それも家族がぴったり寄り添ってソファでくつろぐ時間もそれほど長くはないでしょう。

くつろぐリビング=ソファのある暮らし、という発想を一度やめてみて、普段どのように家族みんなで過ごしているかな、また、将来的にどのように家族が過ごしていたらいいかな、というイメージを持つことで、アフターコロナのリビングダイニングのスタイルが変わっていくような気がします。

ステイホーム期間、家で過ごす時間が楽しかった方たち

緊急事態宣言が解除されて少し経った頃、設計に携わったお客さま数名と連絡をとる機会がありました。その際コロナ禍でのステイホームの過ごし方について触れたのですが、皆さんステイホームを楽しんでいたようでした。

新築、リノベーションを行うことで、何が良かったのか。そしてどう過ごせたのか。
それぞれのご感想について紹介します。

毎日の料理が楽しかったキッチン

ふたりのフォーメーションキッチン


「ふたりのフォーメーションキッチン」は、お料理好きの夫婦がストレスを感じないキッチンをつくるリノベーションでした。

リノベーション前は一見使いやすそうで大きなキッチンだったのですが、ご夫婦が一緒に料理を作るときにお互いの作業が干渉しあってストレスを感じていたそうです。リノベーションする際に、夫婦の動線と作業スペース、極力楽に準備と片付けができる収納をつくるために、3つの島のあるキッチンをデザインしました。

このコロナ禍で、それぞれに外食が多かったご夫婦が3か月以上毎晩家で食事するという生活に変わったけれど、新しくデザインしたキッチンのおかげで快適に過ごせた、毎日使っていて楽しいと感じたそうです。

みゆう建築士
みゆう建築士

ステイホームを楽しめたポイントは「生活、家事の流れにストレスを感じない家に変えていたこと」ですね!

快適な作業場所ができてマスク製作を楽しめた

窓辺の特等席

「窓辺の特等席」はキッチン収納や、ダイニングのワークデスク兼収納を製作した事例ですが、窓際のとても良いスペースに、いろんな用途で楽しめる「居場所」ができました。

設計中に「裁縫をするにしてもダイニングテーブルですることになるし、その都度道具を収納から持ってきて、食事の前になったら片付けないといけないのが大変なのでほとんどしなくなった」と言われていたのですが、このワークデスクを設けたことで、ミシンを出したままベンチで休憩もでき、片付けも楽になったようです。

もともと収納のみを設けるご要望でしたが、休憩できるベンチや、ちょっとした作業ができるワークデスクを設けたことで、居場所が生まれましたね。

このステイホーム期間にマスクを作られたそうです。もともとあまり裁縫が好きではなかったそうですが、準備と片付けが楽になったことと、快適な場所で作業ができるので、テンションがあがった!そうです。

みゆう建築士
みゆう建築士

ステイホームを楽しめたポイント「テンションが上がる居場所、ワークスペースをつくったこと」ですね!

居心地が良いので、家に居ることが癒しになる

小さな庭を楽しみながら暮らせる家

「都会の小さな森の家」は都市部の旗竿地のコンパクトな敷地に小さなお庭のある家です。
建築主のM様は、ステイホームの間、居心地が良いのでこの家で良かったと実感されたそうです。

ステイホーム期間は花が咲き始める春のとても良い季節でしたよね。

少しずつ庭が春の装いに、そして初夏には緑が茂り育っている様子を見られたそうです。
「雨の日も家が癒しです」というメールをいただきましたが、みゆう設計室が手がけた家は雨の日が心地よい家が多いですね。

みゆう建築士
みゆう建築士

ステイホームを楽しめたポイントは「家が癒しである」と感じられる家を作ったことですね!

ステイホームも楽しめる家をつくるポイント

居心地の良い家


それぞれのお客さまの声から「ステイホームも楽しめる家をつくるポイント」をまとめると

まとめ:ステイホームも楽しめる家
  • 生活、家事の流れにストレスを感じない家
  • テンションが上がる居場所、ワークスペースをつくったこと
  • 「家が癒しである」と感じられる家を作ったこと

という家なのだと思いました。
新しいスタイルも取り入れて、これからも安心できる家を提案したいと思います。

少しずつまた新型コロナウィルス感染者数が増えています。

早く終息して、安心できる日がくると良いですね。

この記事で紹介した設計事例、掲載記事

他サイトでの掲載事例

その他の女性建築士ブログ

一級建築士事務所みゆう設計室

〒658-0053 神戸市東灘区住吉宮町3-14-13-201

Tel 078-855-7860