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アアルトが夏の間過ごしたと言われている、実験住宅、コエ・タロはセイナッツァロ(ユヴァスキュラの郊外)の町役場からバスで10分ほどの場所、ムーラッツァロにあります。
1996年にフィンランドに初めて訪れた際に、アアルトミュージアムのインフォメーションにて、夏であれば「コエ・タロ」の見学ができると知りました。いつか訪れたい、その願いをかなえることができました。
神戸で一級建築士事務所を営む、女性建築士「みゆう」が書いています。フィンランドとアアルト建築が大好き。フィンランドの建築と暮らしの魅力を女性建築士目線で伝えたいと思っています。
コエ・タロ(アアルト夏の家)に行きました
実験住宅のツアーは約45分
アアルト夏の家、実験住宅のツアーは約45分。
道路沿いの集合場所に行くと看板がかかっています。
ツアーは森の中を歩いて、サウナや船小屋を見てから本棟の見学に入ります。
見学できるのは6月~9月半ばのようです。
湖を船で行き来していたサマーハウス
アアルトがこの家にいた当時は船で行き来していたそうで、船のための小屋があります。
この船で行き来していたようです。
フィンランドの湖畔、森の中のサウナ
船の小屋から少し歩くとサウナが。本当に森の中にサウナがあります。伝統的なログハウスです。
母屋とはだいぶ離れていました。
アアルトがいろんな実験を試みた夏の家
コエタロは実験住宅という意味のフィンランド語。アアルトはこの建物で様々な建築的実験を試みたと言われています。
ひとつがこの基礎。
フィンランドは固い岩盤が多く、土を掘ると大きな岩がたくさんでてくるそうです。(現にそのような景色を旅の間に見ました)
その岩盤の上に、岩を基礎として丸太の加工を組むという、日本の住宅のような基礎の無い住宅なのです。日本人の感覚からするとひやひやします(笑)
様々なレンガを配置した外壁のコエ・タロ
コエタロの一番の特徴がこの煉瓦の配置。いろんな種類の煉瓦を配置することもひとつの実験だと言われています。
他の建築で使った残りの煉瓦を使用しているようで、要はローコスト住宅だったのですね。言われてみれば、セイナッツァロのタウンホールにみられる「赤いレンガ」とセイナヨキのタウンホールに使われる「青のタイル」が混ざっています。
様々なサイズのレンガをデザインとしてうまく取り入れているところがさすがという感じがします。
自然の力強さを見せるデザイン
アアルトは植物や木々が生い茂る様子を、建築で強調するデザインをよく取り入れています。蔦が壁や塀などの高い位置まで上がっていく様子は、アアルト自邸やマイレア邸でも見られました。
コエ・タロ、夏の家では建物を囲う塀に蔦が絡んでいます。ただ建物を囲うのではなく、この森の中であっても、自然を活かして自然の力強さを見せるデザインにしています。
自然から守るコの字の形状のコエ・タロ、夏の家
コエ・タロ、夏の家といえばコの字に開いた部分から建物を見たアングルの写真が一番有名です。森の中に突然現れ、かつ森の中でも安心できる広場があるような光景にとても感動しました。
自然と共存することで豊かな時間を過ごすことはできるけれども、自然の、森の猛威から守られていると感じるコの字の形状の外壁と塀。
本当に森の中に建っているのですよ。道らしい道もあまりないような場所なのです。
フィンランドの人たちは夏の間、森と湖で過ごす時間を大切にしていると言います。
今、この家で夏の間過ごしているファミリーも、湖で水遊びしたり夏の陽をあびる時間を楽しんでいるようでした。
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アアルトのサマーハウス、夏の家「コエ・タロ」のインテリア
夏の家「コエ・タロ」があるのは湖上の小さな島。様々なレンガやタイルを外観に使用した建物が特徴ですが、室内は極めてシンプルな、サマーハウスらしい簡素な建物です。
太陽熱を取り入れるという実験の空間
写真に写っている女性はツアーガイドさん、とても美しい女性でした。ロフト部分がスタジオ(アトリエ)だそうです。この部分は太陽熱を取り入れるという発想で計画されています。
大きな窓が開くのは中庭側のみです。窓から入り込む日差しを楽しむ、これがフィンランドらしいと感じます。
梁を吊る木組の実験
コエ・タロという名前はフィンランド語で「実験住宅」を意味しているそうです。
その実験のひとつが、このロフトの木組み。
跳ね出しの梁を上から2本の束吊り挟み込む架構です。おもしろいですね。日本の木造住宅から考えると、大味な感じがしますが・・・
窓下に暖房器具、窓際の演出
窓下には暖房器具を設けています。窓枠に黒のタイル、すこし隙間をあけてカウンター、というスタイルはアアルトがデザインした他の建物でも見られました。
窓際には器やオブジェなどを飾り、さらに窓に近接してベンチやソファを置くことで、日当たりの良い場所で家族で過ごす時間を大切にしていることが分かります。
ソファの横にはアアルトがデザインしたフロアランプも。この照明はセイナッツァロの町役場でも使われていましたが、上部と下部を照らす美しい照明です。
中庭の先に湖が見えます。囲われた庭からみえる湖はとても美しい景色でした。
使い込まれている暖炉
使い込まれている暖炉。
今の所有者さんが生活されているところを見学させて頂いていて「使われている住まい」というところにすごく感動しました。家はやはり人の暮らしが無いと寂しさを感じさせます。
たとえ劣化していっても、そこに手を加えていく、その愛情が家に積み重なっていきます。こうやって名作と言われる住宅が守られていくことがとても素敵ですよね。
壁付けの照明と、ベンチのあるダイニングテーブル
アアルト夏の家、コエ・タロは天井の高い勾配屋根部分にリビングダイニングがあります。天井が高いので、ダイニングには壁からテーブル側に跳ねだした照明が設けられています。これはカッコイイですよね。
ベンチも心地よく、artekの3本脚チェア スツール60もスタッキングして暖炉横に置かれていました。
簡素な個室とブルーのインテリア
個室はかなりコンパクトでに作られています。夏の間だけ過ごす家だからかもしれませんが、その小さな空間も心地よさそうです。
リビングも、アアルトがデザインした他の家も共通して「濃い青」のファブリックをよく使っている印象があります。
日差しの強い夏の、海の青、空の青。フィンランドの自然の青というより、もしかしたらイタリアなどの夏の青に憧れた色なのかもしれません。
コエ・タロ(アアルト夏の家)の見学予約、アクセス
フィンランドの近代建築家、アルヴァ・アアルトの設計した住宅の中で、その後のデザインへの基盤となるさまざまな実験を施した「コエ・タロ(フィンランド語で実験住宅を意味する)」
アアルトがユヴァスキュラ近郊の町、セイナッツァロの町役場を設計中に湖上の島の土地と出会い、そこにサマーハウスを建てたと言われています。
コエ・タロがある湖上の島、ムーラッツァロ
ユヴァスキュラの中心地から「コエ・タロがある湖上の島、ムーラッツァロ」までバスで30分ほど。最寄りのバス停の看板がとても素敵でした。
ユヴァスキュラからムーラッツァロへ行くバスの途中でセイナッツァロの町役場があるので、町役場を見学してからムーラッツァロに向かう人が多いようです。
Muuratsalo experimental house (1952–54)
ムーラッツァロ実験住宅
Melalammentie 6, 40900 Jyväskylä, Finland
ユヴァスキュラのアアルトミュージアムでチケット購入
コエ・タロ(アアルト夏の家)の予約はメールで送りました。2023年時点では、大人30ユーロ、学生は15ユーロの見学料。アルヴァアアルトミュージアムでチケットを購入できると予約完了後のメールを頂いたので、見学の前の日にアルヴァアアルトミュージアムに行ってきました。
ユヴァスキュラのインフォメーションで1日バスチケット購入
ユヴァスキュラのバスターターミナルと駅の間にツーリストインフォメーションがあります。ここはユヴァスキュラの建築マップなどももらえますし、とても親切に情報を教えてもらえます。
このユヴァスキュラのツーリストインフォメーションでバスの1日券を購入できました。私はセイナッツァロの町役場まで行き来するのにこのバスチケットを購入しました。
フィンランドはどこでも英語が通じるので旅がしやすいと言われますが、バスなどでは通じないこともあるので、英語ではなくフィンランド語で目的地の文字を示せると良いかもしれません。
アアルト建築旅で出会ったギリシャの建築学生
スタート地点はこのような場所です。こんな森の中にコエタロはあります。ギリシャの建築学生さんたちと出会いました。(写真撮らせて、とお願いしました。)
私も学生時代にアアルトの建築を巡って旅をしたので、なんとなくその頃の気持ちに戻ります。彼女たちとは、翌日、ユヴァスキュラの街で再会しました。
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まとめ
アアルト夏の家、実験住宅「コエ・タロ」はインテリアは簡素でありましたが、その形状、構造、外観でのデザインの実験はその時代にはきっと驚くことばかりのデザインだったのだと思います。予算をかけない中で、素晴らしいデザインを実験として生み出す。この実験がこの後のアアルトの建築に大きく影響しているのです。
夏にフィンランドに訪れるのであれば「コエ・タロ」は必見ですね!フィンランドの人たちの湖と夏の太陽を欲する気持ち、また余暇の過ごし方が分かる素晴らしい空間でした。
まさかこんな森の中に!?という場所にコエ・タロ、アアルト夏の家はありました。
アアルト建築旅をするのには、夏がいいですね!!ユヴァスキュラ、セイナッツァロのタウンホールと合わせてアアルト建築を満喫しましょう!!