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2019年6月、バルセロナ旅のフリータイム、最後に訪れたガウディ建築が「カサ・ミラ」です。波打つような外観の集合住宅、カサ・ミラ。その間取りも山の稜線にも見える屋上も学生の頃から見てみたい!と思っていたので、やっと願いが叶いました。
「カサ・ミラ」は1984年にグエル公園やグエル邸などと共に世界遺産に登録。のちにサグラダファミリア教会やカサ・バトリョなども加わり「アントニ・ガウディの作品群」として登録名を改め、世界遺産に登録されています。
女性一級建築士「みゆう」がこのブログを書いています。自身の母親としての悩みと経験を活かして、子育て中のパパママの家事・育児負担を減らす家を設計しています。旅が大好き!1996年大学生の頃にバルセロナはバックパッカー一人旅をしていました。またバルセロナに行けるとは!でもまた行きたい。
ガウディがデザインした世界遺産建築、カサ・ミラ
「カサ・ミラ」はカサ・バトリョと同じくグラシア通り(Passeig de Gràcia)に面しています。ガウディが先に設計した「カサ・バトリョ」に魅了された実業家ペドロ・ミラとその奥さんロサリオ・セヒモーンの依頼により、ガウディが50代で設計した最後の民間住宅です。1906年~1910年にかけて建築。地下1階、地上6階でオーナーの住宅兼賃貸住宅で、敷地面積は1620㎡。その規模に合わせてふたつの中庭を囲む建物がデザインされました。
ちなみに「カサ・ミラ」「カサ・バトリョ」の「カサ」は今では雑誌「Casa BRUTUS(カーサ・ブルータス)」でも知られていると思いますが、「Casa」が邸宅、家というような意味を持っています。
カサ・ミラは新しい時代の構造から生まれた建築
「カサ・ミラ」はその波打つような外観が特徴とされていますが、その外観や自由度の高い間取りが生まれたのは壁で耐力を持たせるのではなく、柱と梁に荷重を持たせることで、壁を薄くして素材を節約するという検討を進めたそうです。
ファサードが自由な造形となったのは、鉄骨の骨組みで建物を支えたから。
とはいえ、この凹凸の影響で法的にNGな部分もあり、予算や工期の問題でオーナーと争い、完成を待たずにガウディは現場から手を引き、弟子たちの手によって完成したのだそうです。
「La Pedrera(ラ・ペドレラ)」と呼ばれる「カサ・ミラ」
現地では「La Pedrera(ラ・ペドレラ)」と言われている「カサ・ミラ」。「La Pedrera(ラ・ペドレラ)」とは「石切り場」を意味しているそうです。
完成当時、バルセロナ市民は「カサ・ミラ」のことを賛美の表現ではなく、悪い意味で「石切り場」と言っていたと言われています。建物の構造も、形状も、間取りも、人々が知ることの無かった建築を見せられたのですから。石が波打つような形状を皮肉として「La Pedrera(ラ・ペドレラ)」と呼んだその愛称も、今では公式で使われています。
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「カサ・ミラ」の内部見学~屋上からスタート
それでは、「カサ・ミラ」の内部見学スタートです!私は事前に予約していたので、チケット有りの入り口から入ります。見学することが事前に決まっていたら、予約しておくことをオススメします。本当にスムーズですから!
入り口はグラシア通りに垂直の右側の道に入った奥にあります。
チケットの種類によって入り口が異なるので少しわかりにくいかもしれません。
入り口で日本語のオーディオガイドをもらって、見学スタートです。
エレベーターで一気に屋上へ!
見学はまず屋上から!とはいえ、エレベーターがそれほど大きくないので、エレベーターに乗るまで少し待ちます。
屋上に上がると思ったよりも階段で昇り降りする床面でした。
山の稜線の上を歩くような屋上の床
この後に「屋根裏階」に行くのでこの床の形状の意味がよく分かるのですが、山の稜線のようで、登ったり下りたりがとても楽しい屋上階です。見える景色が移動するごとに変わっていきます。
内側の中庭側は高いフェンスがあるから良いのですが、外側は手すり(それも手すりよりはちょっと低いかも)くらいの高さしかありません。私は建築の仕事をしているのにもかかわらず高所恐怖症。外側は無理ー!と思いながらもかなり屋上での時間を楽しみました。手すりに腰かけて写真を撮っている人がいて怖すぎます(笑)
ちなみに音声ガイドはある場所に行くと自然にスタートします。
「カサ・ミラ」から見える、サグラダファミリア教会
カサ・ミラの屋上から、サグラダファミリア教会が見えます。
バルセロナの街も見渡せてとても心地よいです。
煙突や換気口がさまざまな造形に
屋上の造形物は、煙突であったり換気口であったり、それぞれ意味をもっています。
機能はすべて美しく表現しているのです。
屋上階を楽しんだ後は、階段を下りて「屋根裏階」のギャラリーに向かいます。
カサ・ミラの最上階ギャラリー「エスパイ・ガウディ(Space Gaudi/英語)」
最上階は「屋根裏階」になるようです。このフロアはガウディの建築を紹介するギャラリーで、ガウディの建築模型などの資料が展示されています。模型があるのでとてもわかりやすく、ガウディの色んな建築を見た後に、もしくは一番最初に「カサ・ミラ」を見学をすると良いかもしれません。
恐竜の骨のような放物線アーチの構造
カサ・バトリョでも見られた放物線アーチの屋根構造です。
このレンガの放物線アーチ(カタルーニャ・ヴォールト)の形状が、屋上テラスのかたちに繋がっているのですね。
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「カサ・ミラ」の住居フロア見学
ギャラリーの展示を見た後、さらに階段をおりて見学可能な住居フロアへ。
一般の人は最初に屋上に上がるエレベーター以外は階段でおります。
「カサ・ミラ」の住居部分の間取り(平面図)
「カサ・ミラ」は大通りのグラシア通りと、垂直に走るプルベンサ通りのふたつの面に向けてメインのファサードが見られます。その面をメインの居室にしながらも裏側も居室をつくり、中央にふたつの中庭、そして中庭に面して廊下を配置しています。光と風が入りやすい集合住宅の間取りです。
また、自由度の高い居室フロアは構造に影響されずに間仕切りが変えやすい作りになっています。
中庭を囲んで配置される住居
「カサ・ミラ」の住居フロアは、お手伝いさんがいるような家庭の住まいではありますが、おそらく今見てもそれほど古く感じない居住フロアです。もしかしたら、カサ・バトリョのホールなどに比べたら建築的、装飾的には物足りなく感じる人もいるかもしれません。
しかし、この住居、すごいのです。中庭があって風が通って暗い部屋が無く、また、部屋の形状を自由に変えることができるような住まいなのです。ヨーロッパの古い集合住宅は壁で強度を保っているので、平面的に開放的な間取りが難しかったはずです。
お手伝いさんのゾーン、キッチンや洗面所
お子さんの部屋の近くにお手伝いさんの部屋がある、という点はなるほど、面白い、と思ったのですが、お手伝いさんの部屋も明るいのが特徴です。
どうしてもお手伝いさんの部屋というのは狭く、暗く、風通しが悪い傾向になります。それは家の良い場所は家族のための空間に使われるからであり、また水回り(キッチン、洗面所)などと近くなるのでバックヤードに設置されるからです。
お手伝いさんの部屋の内装は、リビングダイニングなどに比べるとかなり簡素ではありますが、明るくて風が通る、働く人の環境を良くするという点に小さく感動しておりました。
こちらはお手伝いさんゾーンのバスルーム。
キッチンもお手伝いさんゾーンにあります。
部屋と部屋の間にバスルームがあるので、ひとつの住戸を2つの住戸に分けることも可能だといいます。
ホテルの部屋にすることも可能だとのこと。自由度が高い建物なのですね。
道路に面した書斎やリビングダイニング
道路に面した部屋は書斎やリビングダイニング、寝室などの家族のための空間です。
ダイニングの窓の外にはファサードで見られる鉄のバルコニーが。窓周りの装飾も美しいです。
床の張り方も部屋によって異なります。
ダイニングと隣り合う書斎の床はヘリンボーン。
居住部分のバスルームはお手伝いさんゾーンのバスルームと設えが異なります。
居住スペースの廊下がとても明るい
「カサ・ミラ」の住居内はどこも明るい、と感じました。
もちろん下の方の階になると上層ほどの明るさは確保できなかったかもしれませんが、それでも思った以上に中庭からのあかりが入って心地よかったです。
廊下が中庭に面しているのでこの明るさが確保できています。
間取りによってはこの中庭部分が居室になっている場所もあります。中庭の上から見ても、これだけ光が差し込んでいますからね。心地良いのも良く分かります。
扉や天井などのディテール
照明と美しい折り上げ天井です。
床のタイル
扉や天井などのディテールは「カサ・バトリョ」ほどの装飾は見られませんが、ハンドル、ドア枠、扉などの形状にこだわっています。
そして住居内の見学ルートは終了です。
この住居内の見学は1999年からスタートしたようです。最上階のみ1996年から見学ができたようです。学生の頃はファサードしか見られなかったので、念願かなってこの居住スペースが見られて本当に幸せでした。
ガウディはこの「カサ・ミラ」で、建築の持つ常識や限界を乗り越えたのだろうなと思います。
2階のギャラリーと、道路に面したミュージアムショップ
2階は何があるのだろう・・・と思って階段をあがってみたら、ギャラリーがありました。
あまり説明もなく、とりあえず入ってみました(笑)
階段を下りて、1階の中庭から出口に向かうと、ミュージアムショップがありました。
サグラダファミリアも、カサ・バトリョも、そしてこのカサ・ミラもミュージアムショップがあったのですが、どこも混んでいてあまりゆっくり見ることもできず、唯一買ったのが「取手型」のマグネット。もう少しゆっくり見たかったな、と思いましたが、その分建物を満喫できたので良かったのかもしれません。
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「カサ・ミラ」ののアクセス、予約
「カサ・ミラ」は「カサ・バトリョ」と同じく、グラシア通り(Passeig de Gràcia)に面してとても分かりやすい場所にあります。
最寄りの地下鉄はディアゴナル(Diagnal)駅。3号線と5号線が通っています。マップなどの表記には「La Pedrera(ラ・ペドレラ)」と書かれていることの方が多いようです。
「カサ・ミラ」の予約方法、見学費用
(※2020.1.29現在)
「カサ・ミラ」も見学することを決めている場合は事前に予約しておくことをオススメします。やはり、こちらも当日チケットの方は混みあっていました。
31ユーロの(1)La Pedrera Premium は
「日時指定なし、優先入場、ガイド冊子、オーディオガイド付」
24ユーロの(2)La Pedrera Essential は
「日付指定有り、オーディオガイド付き」
です。ナイトチケットは居住スペースは見られないようです。
「カサ・ミラ」の予約をベルトラで
実は私は今回、「カサ・ミラ」の予約を公式サイトからではなくて、現地オプショナルツアー予約専門サイトVELTRA(ベルトラ)のサイトを利用しました。
なぜ公式ではなくてベルトラのサイトを利用したかといいますと、こちらだと公式で購入する一般予約と同じ費用で「時間指定なし」の優先入場チケットが購入できたからです。
今回はバルセロナ滞在の行程が読みにくく、時間指定せずに入れるこのチケットが最適でした。
「カサ・ミラ」の内部を見た方がいい?
サグラダ・ファミリア教会や、カサ・バトリョのような色とりどりの装飾が好みの方にはもしかしたら「カサ・ミラ」の内部は物足りなく感じるかもしれません。そのような方で、ガウディ建築を見学できる時間に限りがある場合は「カサ・バトリョ」の方をオススメします。
ただ、この「カサ・ミラ」は近代建築家としてのガウディのチカラを存分に発揮した建築物だと思っています。
ガウディが生み出したかった建築の本質を知りたいのであれば「カサ・ミラ」の内部、特に住居部分は必見です。
近代建築を楽しむのであれば「カサ・ミラ」に行くべし!
近代建築といえば、ル・コルビジェが提唱した近代建築の5原則。
- ピロティ
- 屋上庭園
- 自由な設計図
- 水平連続窓
- 自由なファサード
重厚な壁を積み上げたそれまでの建築から、鉄筋コンクリートや鉄骨造など「解放された空間」を作り上げたのが近代建築でした。近代建築というとミース・ファン・デル・ローエの「Less is more(より少ないことはより豊かである)」やル・コルビジェのサヴォア邸の水平連続窓のように極めてシンプルな建物をイメージされる方も多いかもしれませんが、ガウディのこの「カサ・ミラ」は「屋上庭園、自由な設計図、自由なファサード」そして機能をすべて美しくかたちにする、というまさに近代建築の最先端を行く集合住宅でした。
この「自由な設計図」をつくるために、たくさんの研究を重ねたことと思います。その当時は世の中に受け入れられなくても、未来の建築物のために戦った建築、そう感じました。
近代建築を楽しむのであれば「カサ・ミラ」の内部を見るべし!!絶対にオススメです。